自転車の飛行機輪行・突貫式


前項目では言うなれば正統派スタイルでの梱包方法をレポートした。あのやり方は自転車用のダンボール箱の使用を前提としているわけだが、しかしああいった箱は先進的な自転車屋でしか調達できない。世界には首都であっても先進的な自転車屋が存在しない国は多い。そこで今回は自転車用のダンボールを使わず、ついでに作業の簡略化も突き詰めて、空港まで自走してその場で梱包を行いフライトした突貫式の飛行機輪行方法をレポートする。ただしいくつか条件もあるので現地で要確認のこと。

当然のことながら前項目よりも耐衝撃性は落ちる。が、例えば旅行を終えて日本に帰国する場合であれば、少しくらいパーツがぶっ壊れようともリカバリーできるわけだ。他にも中短期の旅行で、海外で自転車の梱包作業をする余裕のない場合にはうってつけともいえる。また物価(滞在費)の高い欧州各国ならともかく、先進的な自転車用品の調達が可能で物価の安い国、例えば東南アジアのタイやマレーシアなどにフライトするなら現地でリカバリーしやすいので、この方法を検討してもいいだろう。




■概要と必要条件
空港まで自走し、国際空港内で用意されているラッピングサービスで自転車をまるごとラップして、預け入れ荷物として航空会社に引き渡す。

○1:ラッピングサービスの有無
ラッピングサービスは多くの国の空港で行われている。簡単に言えばラッピングマシンによって大型のサランラップで荷物を包むといったものだ。本来は荷物のセキュリティ強化を目的として使われる。値段はだいたい5〜10ドル前後、ラップをたくさん消費するとちょっと多く要求される。今まで確認した国ではコスタリカ、アルゼンチン、セネガル、あとうろ覚えだがコロンビアでもあったはずである。ちなみに日本(成田空港)では2011年現在ラッピングサービスは行われていない。なぜだ日本。
といった具合なので事前に空港に足を運び、ラッピングサービスがあるかどうか要確認となる。ついでに自転車をラップ可能かどうかも聞いておいたほうがいいが、それ自体はまず大丈夫と思われる。


○2:自転車の預け入れ可否
ラッピングした状態の自転車を預け入れ荷物として扱ってもらえるか、航空会社に確認・交渉する。チェックインカウンターで聞くのが確実ではある。このへんは担当者の裁量次第であることが常だが、もっと大きい荷物もやりとりされているのでNGを受ける可能性は低い。




■梱包に必要な資材
補強用のダンボールのみ。他にもラップ時に差し込めるようなものがあれば補強に使える。このときはありあわせのダンボールだけだったが、前項目のように新聞紙を加えてもいいかもしれない。


項目 数量 用途
ダンボールのかけら 小10枚ほど 各部の補強に使う。ちぎって使っていく
ハサミ 1個 ダンボールのかけらを切り分けるのにあると便利


■梱包手順



番号 項目 特記事項
01 キャリア外し
02 ギアを(車輪を外しやすいよう)アウタートップに
034 サイクルコンピュータとハンドル(+オルトリーブのフロントバッグ台座)外し
04 ペダル外し
05 前後ホイール+クイックレリーズ外し
06 サドル外し、シートポスト下げ 調整位置に印を付けておく
07 チェーンのたるみをヒモでくくって固定 ラップの切れ端を流用可能
08 ハンドルを180度回転して手前向きに(省スペース化)
09 タイヤの空気を抜く
10 自転車フレームとホイールのラッピング 前後ホイールを自転車フレームを挟み込む形でラッピングする。チェーンリング、クランク、リアディレイラー、フレームエンド、シートポスト、ハンドル、スプロケット、ハブなど端に当たる部分に補強材を差し込みつつ行う。特に外側にあたる部分は要補強
11 ペダルやサドルなどをラッピングして本体に固定 この頃には自転車は繭のようになっているので上から固定していける。開封時に使うナイフやハサミも機内持ち込みできないのでここで固定していいく
12 さらに全体ラッピング





■その他のメモ
○梱包後の重量
自転車ダンボールに箱詰めした時よりもさらに3キロほど軽めに抑える事ができた。確か約15キロ(キャリアは別)。

○キャリアはどうする?
取り外した前後キャリアは同じくラッピングサービスを使って手荷物で運ぶ。
預けると歪んでしまう可能性が高い。ある程度は歪んでも矯正できるが。

○空港まではどうする?
自走していく。

○空港の下見は?
必要である。ラッピングサービスの有無、航空会社への自転車預け入れの確認をしておく。
宿から空港までの自走経路も要チェック。迷ったら大変。

○空港の作業時間は?
作業自体は約1時間ほどで終わる。が、念のため余裕を持っておいた方がよさげ。

○開封は?
到着先の空港で受け取ってその場で開封する。最初はボールペンなどでラップに穴を開けて切り裂いていけばいい。結構疲れるが。




■参考エントリ(前項目でリンクしたものと同じ)
過去にブログで書いた旅行中メモ。オルトリーブのフロントバッグ台座の取り外し写真とかを載せているので同じ物を使うなら参考になると思う。

【参考】旅行中メモ第7回:中米諸国総括とかコスタリカからエクアドルへの空輸とか




■参考写真と動画


空港へは自走していく。道に迷うと搭乗時間に間に合わなくなる危険があるので注意



これがラッピングマシンである。存在するならチェックインカウンターの近くにあるはずである



巻き始める




動画バージョン。ラッピングマシンはいくつかの国で見たが構造はどこも同じ



補強した箇所。ラップだけでも重ねて巻くことである程度の耐衝撃性を得ることが可能




自転車用バッグもひとつにまとめるといろいろ捗る。把手となる部分を一箇所出しておく(作業員がやってくれるが)



作業終了。自転車用ダンボール使用時よりもかなりコンパクトに収まっている




キャリアもラッピングして全荷物梱包完了。自転車の分解開始からここまで所要時間は58分であった



ちなみにこのセネガルの国際空港は非常にしょぼいものだったが、それでもラッピングマシンはあった。多くの国で導入されていると思うのだが。日本で導入されていないのは、逆にセキュリティが万全だからなのかもしれない




ちなみにコスタリカの空港にあったラッピングマシン。どこもだいたい同じ




■到着後に発生したパーツの不具合について

○フロントディレイラーの多少の調整ずれ
→ラップ時の圧力で多少狂ったようだ。とりあえず自走に問題なし。

○リアディレイラーの多少の調整ずれ
→ラップ時の圧力で多少狂ったようだ。とりあえず自走に問題なし。

○キャリアの歪み
→これはいつものことだがラップ時の圧力で歪む。いつもは強引に手荷物で持ち込んでいるのだが、このときは職員に頑として止められ、壊れ物のシールを貼れば絶対安全だからという話で預け入れ荷物として引き渡した。が、結果的にはいつもより歪んでいたT_T おそらく運搬時や積載時に荷物の下敷きになるなどして圧力がかかったのだろう。やはりキャリアは強引にでも手荷物で持ち込むべきである。
で、歪んだ状態で強引にフロントフォークやフレームに取り付けるわけだが、このときは歪みが大きくてねじをなめかかってしまった。一部のねじは巻かないまま、とりあえず自走に問題なし。



この時は乗り継ぎ1回で上記の問題のみ。補強したとはいえ、実質ディレイラーの歪みだけで済んだのは幸運だった。運搬時の扱いや積載時の状態によっても不具合は発生しやすいので注意したいところ。破損していた場合は海外旅行保険の対象となる(たぶん)ので到着先の航空会社オフィスでレポートを作成しておくのを忘れずに。




■日本でのラッピング
日本(成田空港)では2011年現在ラッピングマシンは導入されていない。が、荷物(自転車用バッグ)をまとめるだけなら市販のサランラップとガムテープでセルフラッピング可能である。100円ショップで買い込めば1000円かからない。一人でやろうとすると大変だが……。

特に自転車用バッグは小分けになるため、航空会社の一人あたりの預け入れ荷物個数制限(重量ではない)を簡単にオーバーする。運送業者を使って空港に自転車を送る際、自転車用バッグ等も重量制限をオーバーしない程度にサランラップでまとめて送っておくと非常に楽。だいたい1個20キロまでが目安だ。


雪だるま制作の要領でラップを巻いていく。モスラの歌が聞こえたらあなたはおっさんである



手間はかかるが仕上がりは機械で巻くのとほとんど変わらない。複数の荷物をホールド可能だ。



自転車に手動で巻くメリットはあまりないが、通常の輪行でもホイールに巻けばフレームとスプロケット、ブレーキディスクの接触による傷を防げるように思える(軍手などでカバーするのがよく知られる方法)





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