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さて、この日はひたすら「待つ」日となってしまった。
バス――と言ってもただのワゴン車――で首都ウィントフックへ向かうのだけど、こういった僻地のバスは人が集まらないと発車しないのだ。

バスの主は昼過ぎぐらいには出るかもしれんと言っていたが、なかなか人が集まらない。
しかしいきなり数人来ることもあるので、取り残されてはかなわない。バスの近辺でうろうろする以外になかった。
天気は快晴で、あまりにも暑く散歩することもできない。退屈だ。




昼過ぎ、人だかりがガヤガヤわめきながらバス乗り場へやってきた。
黒人の大人が、12〜15歳くらいの少年を引っぱってきている。少年はうぅ〜とか呻きながら泣いていた。
まわりの大人はなんやかや言いながら笑ったり、怒ったりしている。

話を聞くと、どうやら少年は麻薬に手を出したそうである。
へーそうなのか……この国でもドラッグに手を出すと事件になるんだなあと思っていると、付近の大人がバスの近くにあった木の枝をバキッと折り、泣きわめく少年をなんとバシバシとたたきつけはじめた。

      / ̄ ̄\
    /ノ( _ノ  \
    | ⌒(( ●)(●)        オラオラァ!! このクズが!!
    .|     (__人__) /⌒l    ヤクに手ェ出してタダで済むと思うなよ!!
     |     ` ⌒´ノ |`'''|          
    / ⌒ヽ     }  |  |           (;;ノ;; (′‘ ・  
   /  へ  \   }__/ /      ′・  ( (´;^`⌒)∴⌒`.・   ” ;  ’、′
 / / |      ノ   ノ           ●=))  ((=● . ’, ・
( _ ノ    |      \´       _   /    (__人__)’,∴\ ,  ’ギャアアアアア
       |       \_,, -‐ ''"   ̄ ゙̄''―---└'´ ̄`ヽ/  \ て 
       .|                        __ ノ    | (そ
       ヽ           _,, -‐ ''" ̄ヽ、 ̄ `ー'´    _/r'" ̄
         \       , '´          /       ./
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わんわん泣き叫ぶ少年。うへー…とその光景をしかめっつらで見ていた僕に、近くの黒人が振り返って笑って言った。


       /ニYニヽ
   (ヽ   /( ゚ )( ゚ )ヽ   /)
  (((i ) /::::⌒`´⌒::::\  ( i))) ウェルカムアフリカっていうwwwwwww
 /∠_| ,-)___(-,|_ゝ \      ででででっていうwwwwwww
( ___、  |-┬-|    ,__ )
    |    `ー'´   /´
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バスは夕方になってようやく発車した。この分だと到着は明日になりそうだ。
一眠りしようかと思い始めたころ、運転手と助手席の男が車内に積まれたスピーカーからバカでかいアフリカンミュージックを流しはじめた。
しまった……以前にもエジプトで遭遇したことがある。
こういうところのミニバスの夜行は運転手が眠ってしまわないように大音量で音楽をかけるのだ。

「頼むから少し音量を下げてくれ!」と叫んだ。
叫ばないと声が届かないくらいの、まるでライブハウスのような音量なのだ。
隣にいたバカナミビア人が「ヘイ!音楽は好きじゃないのか!?ダンスしようぜ!」などと言ってきた。
他に同調して文句を言ってくれる乗客はいない。音楽にノっている奴もいれば、かまわず目を閉じている奴もいる。
郷に入れば郷に従えということか。一瞬でもナミビアが近代的だと感じた自分を呪った。
なぜ夜行バスで超大音量のアフリカンミュージックを聞かされなければならないのだ……。
ここはやはり野蛮人の国なのだ。くそったれ。
こうなったら耐久戦だ。持っていた水でティッシュを濡らして両耳に詰め、ロープで頭をぐるぐる巻きにして固定した。
これで幾分か音がやわらぐ。ものすごく窮屈な姿勢だったがむりやり寝た。




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