メインの大通りから少し入ったところにあるローカルなマーケット。
この町は山の中腹にあるため、マーケットや居住区も山の斜面にある。





人々の生活そのものが目の前に広がる。





大音量でアフリカンミュージックのかかっているボロ小屋。若者がドリンクを飲んでくつろいでいる。日本でいうクラブのような場所なのだろうか。





出されたドリンク。子供がオママゴトで酷使したようなプラスチックのコップに、白くにごった謎の液体が……。
「これは何!?」と聞いても教えてくれない。おそるおそる飲むと、お酢のような、強い酸味のある味。
飲めなくもない…が…なにかウィルスが入ってそうな強烈な味であった。
ドリンクの正体はバンブージュースというらしい。たぶんそのへんに生えてる竹を発酵させるかどうかした飲料なのだろう……。





ジミーに案内されて進む。





バナナ林に埋もれるようにして居住区がある。家は土の壁にバラックをかぶせたような、まあボロい家屋だ。





しかし意外にも中は綺麗。てっきり虫とかが部屋の隅にわんさかいたりするのかと思ったが、そんな気配はなかった。





彼の親戚の家もお宅拝見。





こちらも清潔だ。ちょっといい家?





ここだけ見ると日本の団地とかとそう変わらない。こういうのはあまりテレビとかで見られない気がする。





夜はジミーとメシ屋とナイトバー、ビリヤードをはしご。
コロンゴーロというどこの部位なのかよくわからない骨と肉が入ったスープを飲まされた。
豚骨スープのダシを直接飲まされたような、アクのかたまりのようなマッタリした味。
「ダハハ、こいつは豚の足だ!ウーン、うまいぜ!」
そう言いながらジミーは原始人のように手で肉をちぎってガツガツと食べた。ワイルドだね!俺のも食べなよ!



「なあ、金をくれないか」
バーでジミーは控えめな態度でぼくにお金を要求してきた。今日のガイド料といったところか。彼はいい人だったし、払ってもいいとおもう。だが念のため聞いてみた。
「金がほしいのか?」
「ああ…。俺には兄弟が多いし、金が必要なんだ」
タンザニアの人々の暮らしは決して豊かとはいえない。
あわれみの気持ちがなかったわけじゃないけど、僕は豊かな日本でぬくぬくと育ってきて、たまたまこの町で知り合った貧乏なタンザニア人に「めぐんであげる」構図になってしまっているようで気が引けた。
でも町をガイドしてくれたいい人の彼に、お礼をあげるならいいとおもった。
僕はビールや食事のお金に加えて、ガイド料として彼に10ドルをあげた。現地の感覚だと7000円くらいの価値だと思う。

財布から紙幣をとりだすとき、ちょっとした好奇心からついでに日本の千円札をとりだして見せた。
日本円なんて見たこともないだろうジミーは珍しそうに千円札を見たあと、それを手にして席を立とうとした。
「おいおい、それは大切なものだからやれないぞ」
「わかってるわかってる!ちょっとメシ屋の友達にみせてくるだけだ」
「えぇ?どこに持っていく気だ?」
「心配すンな。ちょっと持ってくだけ。みんな驚くぞ!」
「えぇ…?ちゃんと返してくれよ?」
「オーケーオーケー!問題ない」

そう言ってさっきのメシ屋へ行ったジミーは、しばらくして戻ってきた。

「金はどうしたんだ?」
「友達に渡してきた」
「こまるよ!あれは大切なものなんだ。返してくれ」
「心配すンなって…明日返せば問題ないだろ?」
「ホントか?」
「明日の朝メシはさっきのメシ屋で食べるから、そのときに返してもらえるよ」
「しかたねーなぁ…」

少し気がゆるんでいたと思う。しかしジミーに金をだましとろうとかそういう気配はなかったし、お酒も入っていたのでまあいいやという気分になっていた。
何より、ここ数日はひとりで走ってばかりでこんな形で人と接したのはずいぶん久しぶりな気がしていた。日本を出てそれほど経っているわけじゃないのに。
僕はそのままジミーと宿へ戻った。
「そいじゃフレンド、また明日な!」
ジミーは陽気に部屋へ引き上げていった。
シャワーはお湯が出ないので手で身体を拭いてすませた。日記を書いて寝た。明日でタンザニアとはお別れだ。




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