あまりの暑さにくらくらしながら走っていた。

赤道に近いタンザニアの日中はねんがらねんじゅう暑いのだが、季節は3月の終わりで、
南半球のこの国では日本で言うところの8月末に相当する。
そのうえ雨季に入りかけていて、昨日の初走行では途中で強烈なスコールに遭い、ヘロヘロになって町に着いたのだった。
今日も夕方に降るかもしれない。早めに次の町に着きたい。





それにしても異常なほど暑い。温度計をみると40度を超えていた。
日本の夏よりは乾燥しているので日陰は涼しいのだが、何もない路上に影は落ちないので
自転車のペダルを漕いでいる間はずっと日に当たりながら走ることになる。
この日は雲が少なくて強烈な太陽光に容赦なく焼かれた。
20〜40メートルくらいのアップダウンが交互にくるのも想像以上につらい。
登りでは気持ち悪いほど汗が出た。登り早く終われ、ということ以外の思考は働かなくなる。
逆に下りでは下りは楽だな、風が気持ちいいな、ということ以外には何も感じない。

そんな道が50キロくらいつづいて身体じゅうがピリピリ痛くなってきた。日焼けだ。
しかし夕方になったらスコールが来るかもしれないのでひたすらペダルを回した。
60キロ。ピリピリというよりズキズキ痛むようになってきた。
70キロ。痛い。じっとしてても痛いが、ときどきカーッと身体の表面に電流を流されているような痛みが走る。
80キロ。「モロゴロまであと10キロ」の看板をみつけた。
死力を尽くしてラストスパートをかける。身体じゅうが燃えるように熱い。

ふらふらの体でモロゴロの町……の入り口に着いた。
ボロ宿を見つけてとりあえずベッドに倒れこんだ。
日焼けした箇所がすべて強烈に痛い。明らかに暑いというレベルを超えている。
しまった。途中で切り上げるべきだったのだ。





触るどころか動かすのも痛い。日光にさらすだけで痛い。しかも焼けた表面が明らかに腫れてきていた。
首まわりと顔全体、耳の上まで日にさらされていた箇所はことごとく同じ状態。

し、死ぬ……。

火傷やヒフの薬は持ってきていなかった。
荷物をひっくり返すと冷えピタが出てきた。数は6枚。

た、足らねえ……。

しかし他にどうしようもない。
おぼつかない足でベッドから起き上がり、シャワーはあるかとボロ宿のおやじに聞いてみたら
「シャワーはバケツに入った水1杯」と素敵な回答を得ることができた。
もうお金を払っていたがその金はやるから、と説明して宿を変えることを決意。
朦朧とする頭で町の人に「大きいホテルはないか」と聞きながら
さらに5キロ、いや10キロくらいか?もうどのくらいなのかもわからないまま走りきって
こちらの国ではかなり高めのホテルを探し出した。





部屋はきれいな個室でシャワー、エアコン付。約30ドルだ。
選り好みしてる余裕は無い。病院代わりに泊まることにした。
身体じゅうが焼けるように痛くてかなわない!




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